夏真っ盛り。この時期は車海老やアワビなど個性的な食材が多いですね。
その中でも寿司屋でしか見ない「新子」という魚をご存知ですか?
「新子」のために一年寿司屋へ通うお客さんもいるほどです。
さらに「新子」は本マグロやウニよりも高額だったりするんです。
寿司好きならこの時期に必ず食べたい「新子」の話しをします。
スポンサーリンク1 新子とコハダ
そもそも「新子」とは、コハダの小さいものを言います。
コハダはいわゆる出世魚で小さいものから「新子<コハダ<ナカズミ<コノシロ」と名前を変えて呼ばれます。
新子の大きさはだいたい3〜5cmくらいのものをさします。
5月頃に産卵したものが約一ヶ月ほどで新子のサイズまで成長し漁獲されます。
産地は千葉県や静岡県などが多く、九州などでも獲れます。
2 なぜ高額なの?
コハダの小さいものと聞くと、なんだか安価なような気がしますよね。
しかし初物が市場で競りに出ると1kgで10万円以上することもあるんです!!
本マグロの高いものでも3〜4万円なことを考えると異常な高値と言えますね。
ではなぜそんなに高値で取引されるのか?
その理由として大きく三つの要因が挙げられます。
2-1 漁獲期間が短い
静岡県などから初物の新子がだいたい6月末頃から出回ります。
そこからだいたい約1ヶ月ほどで7cmくらいにまで大きくなります。
そうなると新子でなくコハダになってしまいます。
新子は大きくなると皮が固くなり、骨もしっかりしてしまうので新子の魅力がなくなってしまいます。
2-2 江戸っ子の初物好き精神
昔から江戸っ子は初物が大好きで、初物と聞くとそれこそ我先にと買い求めていました。
「女房を質に入れても初鰹」などとことわざが残ることにもそれは現れています。
しかし新子は数が少なくそんな初物好きな全ての江戸っ子には行き渡りません。
寿司屋もまずは常連さんから新子を出していきます。
そのため、新子をいち早く食べたいがために、一軒の寿司屋へ一年間足繁く通いお店との関係を築く人まで出るくらいです。
2-3 寿司屋の意地
そんな新子を期待する江戸っ子気質なお客さまに応えるべく、寿司屋も意地とプライドをかけて初物の新子を追いかけます!
新子は小さく身が柔らかい上に味も繊細です。
包丁の技術はもちろん、塩やお酢の加減で美味しくも台無しにもしてしまいます。
まさに職人の腕の見せ所です。
さらに仕込む数も半端ではありません。
出始めの新子は一貫に対して8〜12尾の新子を使います。
つまり10貫なら120匹、100貫なら1200匹も仕込む必要があるのです。
さらに初物の新子は市場で1kg5〜10万円ほどします。
だいたい100gで50匹程度の新子が入っているので、仮に1kg5万円で計算しても1匹あたりなんと原価で100円することになります。
もし一貫に12匹使うとお寿司一貫の原価が1200円となります。
しかしこの時期のお寿司屋さんは新子をだいたい1000円前後で原価。もしくは原価割れして提供します。
これは初物は昔から儲からないと割り切り、手間暇かけて損をする寿司屋の気合の入った意地の仕事なのです。
3 新子の味
新子は身は繊細で、皮はとても柔らかです。
また、骨も気にならない大きさなので口の中でホロリとほぐれるようです。
光物の独特の生臭みもないので光物が苦手でも大丈夫です。
塩とお酢でかすかに〆ることにより、優しい新子の甘みをグッと引き上げてくれます。
ちなみに散々初物の話をしましたが、味わいとしては一貫に3匹くらいのサイズになってからの方が美味しかったりします。
まとめ
いかがでしたか?
身近な寿司ネタのコハダに「新子」という時期があり非常に貴重な寿司ネタだということが解ったんじゃないですか?
そこには新子を売る側、食べる側、そしてお寿司にする人たちにも色々な思いや苦労があるんですね。
そんなことを知ってから新子を食べると、また今までとは違ったことに気がつくかもしれませんね!
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